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目的を明確にする

投稿日:2023年 04月 11日

    考える際に求められる姿勢として、論理的に考える、多面的・多角的に考えるの次は、目的を意識して考えるということである。目的を意識して考えるということをもう少し詳しく説明すると、まずは目的を明確にすることが必要となる。そして次に、その目的をいつも意識して考える、意識して行動することが求められるということになる。

 大学の活動においても、漠然と目的は決まっているが、明確になっていないというケースも少なくないように思う。例として、今ではどこの大学でも、年に数回以上、開催されているオープンキャンパスを取り上げて考えてみたいと思う。オープンキャンパスの内容としては、学部・学科内容の説明、模擬授業、施設見学、学食体験、質問コーナーといったものが一般的であると思われる。

 オープンキャンパスを開催する目的は何かといえば、その大学のことを実感してもらうということであろう。そのために、前述のようなさまざまなプログラムを用意し、多くの教職員が関わり、学生スタッフにも協力してもらい、大学を挙げて行っているのである。では、どのようなものとして実感してもらうのかという、具体的な内容は決まっているのであろうか。

 この点が特に意識されていないと、一般的な学部・学科内容の説明が行われ、担当教員によって興味深かったり、そうでもなかったりといった授業の体験してもらい、それほど他の大学と変わりばえのしないランチを食べてもらうことになる。施設見学は、充実した設備を備えた大学にとっては差別化を図れる良い機会となるが、高等学校の施設とそれほど変わらない大学の場合には、特別な感動を与えることもできないことになる。このような状況であるならば、オープンキャンパスが終わり、家路につく参加者がその大学のことをどのように実感したかは、なかなか想像ができないことであり、参加者それぞれによって異なるということになってしまうと思われる。

 オープンキャンパスの目的は、その大学のことを実感してもらうことだと述べたが、どのようなものであっても実感してもらえればいいということではもちろんない。では、どのように実感してもらえればいいのかといえば、他の大学と比べて魅力的な大学である、入学したら自分にとって有用な価値が与えられる大学であると実感してもらうことである。そうであるならば、実感してもらいたい姿を明確にし、それを教職員や学生スタッフで共有すること、そしてその目的を達成できるようにプログラムの内容を設計していくことが大切なこととなる。それができたならば、オープンキャンパスの終了時、多くの参加者が、大学が目的とした持ってもらいたいイメージを実感して帰っていくという状況を生み出すことになるのである

 これは、同じく広報活動の一つである、交通広告についても同様な状況があるように思う。例えば、駅構内に掲出されている広告看板である。今や、駅構内に出されている看板のうち、大学の看板が占める率は、相当程度になっているように感じている。看板を出す目的はといえば、当然、その大学のことを多くの人、特にステークホルダーとなる人に知ってもらうためである。では、それは単にその大学の存在を知るだけでいいのであろうか。

 都市部を除けば、各地域にある大学の数というものはそれほど多くはないので、その地域に住んでいる人、特にステークホルダーとなる人であれば、おそらくその存在は知っているというケースがほとんどではないかと思う。そうであるならば、存在を知ってもらうために看板を出すのは意味がないこと、もったいないことになってしまう。ここでもオープンキャンパスの場合と同様に、どのようなことを知ってもらいたいのかということを明確にする必要がある。

 そのうえで、ではそのためには看板にどのような情報を載せたらいいのかということを検討して決めていく必要がある。また、検討した結果、看板に載せられる情報量では知ってもらいたい情報を伝えきれないという結論や、多くの情報を載せても立ち止まってまでして読んでくれる人はいないであろうという結論になった場合であれば、他の広報手段を考えるということになる。

 このように、当該活動の抽象的な目的だけでなく、その具体的な内容を明らかにすることによって、活動内容を適切に修正すること、もしくは他の活動を選択するというように、目的達成にとって有用な手段を実施できるようになるのである。