ブログ

AO入試について考える

投稿日:2009年 08月 03日

AO入試とは

学校関係者以外の方には耳慣れない言葉であるAO入試という入試方法が、ここ十数年の間に急増している。最初のころは関係者でもオフィスオートメーションで聞きなれたOAという言葉から、OA入試という人も少なくなかった程度の普及状況であった。それが現在では実施大学525校と、全大学の7割が実施している状況になっている。

AO入試とはアメリカから始まった入試方法で、従来の入試のように一回の学力試験でなく、ある程度の期間、手間暇をかけて受験生のこれまでの活動状況、入学の目的、入学後の意欲等を確認した上で入学を認めるというものである。日本での実施は1990年、慶應義塾大学が湘南藤沢キャンパス開設の際に導入したのが始まりである。

 AO入試がここまで多くの大学で実施されるようになった背景には、二つの流れがある。一つは少子化に対応した、学生募集方法の多様化という事情である。この流れの線上では、入りやすい入試の学生確保における有用性ということで、AO入試が位置づけられている。そしてもう一つは、多様な発想力、表現力、行動力を持つ人材に対する社会的ニーズの現れということである。

これからの社会で求められる人材

 日本の社会は1955年から1991年まで、時期により伸び具合は異なっていたが、継続して発展を続けてきたと言うことができるであろう。このような社会で必要とされた人材は、決められたことをきちんと処理できる優秀な労働者というものであった。そこでは、個性的であるということは、むしろ邪魔であるという面もあったと思われる。

 ところがバブル経済が崩壊し、景気も低迷した将来の見通せない現在の社会においては、もはや従来のような、答えの分かっているものを正確に処理するという能力では対応ができなくなっているのである。過去の経験からでは答えの見つからない事象に対して、多様な面から考えることのできる力、従来にない新しいことを発想できる力、そしてそれを個性的に表現する力、周りを巻き込んでことを進めていくことのできる行動力、そのような力を持つ人材がこれからの社会では必要になってきているのである。

 AO入試は、大学の入り口面における、社会の人材ニーズに対応したものとして評価できると思う。そしてこれからは入り口の入試政策だけでなく、大学の中での教育面においても、このニーズに対応した取り組みが不可欠となってくるであろう。豊かな教養を基盤に、自ら考えていくことのできる人材の育成である。