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ロジカルシンキングのすすめ 1

投稿日:2021年 10月 23日

 教職員の能力開発を図るには、研修や自己啓発といったことももちろん有用なことではあるが、風土づくりという観点から考えると、日常的に考える習慣をつけていくことが最も効果的であると思う。そして、考える際に必要な姿勢としては、論理的に考えること、多面的・多角的に考えること、そして常に目的を意識して考えるということが大切である。これらを順に考えていきたい。

最近、ロジカルシンキングという言葉をよく耳にするようになった。その背景には、国際化の進展、ビジネス環境の複雑化といったことがあると思われる。日本人同士であれば、阿吽の呼吸と言われるように、相手の言いたいことを察して理解するということもできるが、文化や習慣の違う外国人との間では、論理的に考え、説明しなければ通じないからである。そして先行きの不透明感の強まり、取り巻く環境の変化の速さ、テクノロジーの進歩などにより、ますます複雑化してきているビジネスの現場においては、筋道を立てて考えないと、成果に結びつく確率は極めて低くなってしまうという状況になっているからである。

 このような事情から注目されてきているロジカルシンキングであるが、これは大学にとっても有用な考え方であると思う。かつての恵まれた環境下では、大学は毎年、同じような取り組みを行うことで、特に支障なく運営することができていたが、十八歳人口が減少し、受験生から選ばれる大学にならないと生き残ることができないという環境になってくると、学生にとって重要な価値を与えられる大学になるためにはどうしたらいいかということを、きちんと考えなければならなくなったからである。

 ロジカルシンキングと言われている考え方には、演繹法、帰納法など、さまざまなものがあるが、まず大学に取り入れるべきものは、仮説思考ではないかと思う。仮説とは、文字通り仮の説ということで、その時点で考えられる最も正解に近いと思われる答えであり、それに基づいてとりあえず実行し、その結果を検証して仮説を修正していくという考え方である。

何か意思決定をしなければならない時、我々は多くの情報を集めることが適切な決断をするためには必要だと考え、情報収集に多くの時間とパワーをかけてしまいがちである。しかし、いくら多くの情報を収集したとしても、そこから明確な正解が出てくるわけではないし、時間をかけることによってチャンスを逸してしまう恐れもある。また変化の激しい環境下では、状況が変わってしまうということもある。大学を取り巻く環境が、厳しい方向に、めまぐるしく変化していっている現在、いち早く行動を起こし、状況を改善していく必要がある。そのような状況で有用なのが、この仮説思考であると思う。