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大学の進む道は 1

投稿日:2025年 08月 07日

 近代マーケティングの父ともいわれるフィリップ・コトラー氏の弟子にあたる、サンタクララ大学のカレン・フォックス博士は、日本で行われた講演でこのように言っている。取り巻く環境がますます厳しくなる、これからの大学が進む道は三つしかないと。そのうちの一つは、ダウンサイジングである。学部を減らしたり、学部・学科の定員を減らしたりといったことで、現在、すでに多くの大学で実施されているものである。二つ目は、М&A(合併・買収)という道である。これも近年、増えつつあり、私の地元でも、設置している短期大学を別の学校法人に移管するといった例も出てきている。そして三つ目の道が、イノベーションということである。

 これら三つの道の中で、前向きな選択をするとなれば、イノベーションということになる。イノベーションとは、一般的には変革と訳されているが、変革とは、ものごとを変えて新しくすることという意味である。もちろん単に新しくすればいいということではなく、顧客や市場から求められている状態に、新しく変えていくということである。これを大学で考えるならば、顧客(学生等)や社会に対して、有用な、新しい価値を与えられる大学になるということである。

 ここで大切なことは、顧客や社会にとって、新しい有用な価値とは何かを見出していくことである。すなわち、顧客や市場を見つめるマーケティング的な視点に立って、現在、そして将来において有用な顧客価値とは何なのかということを洞察していくことが、イノベーションを進めるためには不可欠なこととなる。言い換えるならば、顧客や社会にとって意味のある差別化が求められているということになる。

 しかし実情は、逆の方向に進んでいるようにも思われる。最近、コモディティ化という言葉がよく使われるようになった。コモディティ化とは、個性がなくなり均質化するという状況を表す言葉である。原因はいろいろと考えられるが、一つには供給が過多になり、違いが分かりにくくなるということが挙げられる。一九七〇年代には四百校程度であった大学の数は、近年の十八歳人口の継続的な減少という状況にもかかわらず、八百校近くにまで増えてきているのである。それに加えて、補助金による改革の方向性の誘導ということで、どの大学のパンフレットを見ても、地域との連携活動や産業界との連携といった取り組みが並ぶようになり、ますます均質化が進んでいるといえる。