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大学職員について考える

投稿日:2026年 04月 27日

 今、関心を持っている一つのテーマが大学職員の養成である。そこで何回かにわたって、大学職員について考えていこうと思います。

 最初は「エンプロイアビリティ」についてです。

 

エンプロイアビリティとは

 私が以前いた大学は、資格特待生制度などの施策により、定員割れの状態は解消できたが、その後、どのようにして魅力ある大学づくりをしていったらいいのかについては、具体的な考えは固まっていなかった。ただ、狙っていたポジションは、県内の国公立大学の併願校になるといったものだったので、偏差値を上げなければならないことだけは認識していた。

 偏差値を上げるためには、その大学に入りたいという人を増やすことが必要であり、そのためには社会的評価を上げ、人気を高めるということが必要となる。それは言い換えれば、他の大学よりも魅力ある大学となること、すなわち差別化を図るということである。何で差別化を図るべきかを考えた結果、教育の内容といった可視化しにくいものでなく、しかも本人も保護者も重視していると思われる、就職実績で差別化していこうと決めたのである。

 ただここで問題となるのは、就職実績は確かに具体的な就職先企業名等を明らかにすることで示せるのであるが、受験生や一般の人が見たときに、大学間の優劣がつけにくいということである。○○銀行と、△△製作所、どちらが就職先として優れているのかは、なかなか判断できないのである。この点を解決するため、県内の他の大学ではほとんど出ていない就職実績である、航空会社への就職ということを目標に掲げたのである。

 これを可能にするためには、語学力の養成といったことも求められるが、それにも増して、就職支援体制を充実させることが重要と思い、適切な就職支援を可能にするスキルを身に付けることができる、キャリアコンサルタント資格を取得しようと考えたのである。毎週、土曜、日曜、東京での研修を朝から夕方まで受講し、筆記試験、面接試験をなんとか無事パスし、資格を取得することができたのである。

 その後、就職支援やキャリア開発の勉強をしていく中で、「エンプロイアビリティ」という言葉に出会ったのである。エンプロイアビリティとは、Employ(雇用する)とAbility(能力)を組み合わせた言葉で、雇用される能力を意味するものである。転職できる能力といってもいいと思う。大学職員でいえば、他の大学でも雇われることのできる、言い換えれば、他の大学でも欲しいと思われるような職員になるということである。

 それまで、今いる大学を離れて他で働くといったことは考えたことがなかったので、この言葉は私にとって、新しい視野を広げてくれるものであった。どこの大学でも欲しいと思われるような人材になるということは、所属している組織のために働くということだけではなく、自己の成長にもつながるような働き方を志向するものといえる。そして早速、自分の部署の部屋の壁に、「組織の成果と個人の成長」と書いた紙を貼り出したのである。

 

自己啓発を開始

 エンプロイアビリティを獲得するためには、自分の能力開発を行うことが必須のこととなる。これまで、組織の成果ということだけを考えて仕事をしてきたので、その方向性を少し切り替えることにしたのである。そして最初に行ったのが、キャリアコンサルタントの資格を生かした、高校生への進路講演であった。

当時、高等学校の進路指導の現場では、キャリア教育が意識され始めた頃であったので、「大学進学について」といったテーマを、キャリアデザインと関連させて話す講演はニーズがあり、いろいろな高校で進路講演に呼ばれるようになった。中には、夏休みの過ごし方を話してくれといった、自分たちでやってほしいと思えるような依頼もあったが、多くの高校で、進路だけでなく、いろいろなテーマで話す機会が増えていった。

また、大学でもインターンシップやキャリアデザインに関する授業科目を新設し、その企画や指導も担当するようになった。授業で話してみて感じたことは、惹きつけるような話し方が全然できていないということであった。高校生の場合には、部外者が来て話しているということで緊張して聞いてくれるのであるが、学生の場合は、そうはいかない。面白いとか、役に立つとか感じられないと、居眠りや私語が始まるのである。

 そこで次に挑んだのが、プレゼンテーション技術の習得であった。丁度そのころ、就職支援活動に対して補助金が支給されたので、それを利用してプレゼンテーションの研修を受講したのである。研修の中で、自分のプレゼンを録画して振り返る時間があった。それを見ると、事例の使い方などが自分視点になっていて、これでは伝わりにくいなと感じられるものであった。プレゼンテーション研修では、内容の構成の仕方、視線や表情、立ち方といった伝え方の基本を学ぶことができ、それをもとに経験を重ねる中で、最後には大学で学生たちに、プレゼンテーションの研修を実施できるようにまでなることができた。またこれは、現在、私の行っている研修や講演でも活用できるものとなっている。

 

執筆活動もスタート

 このような活動を続けている中で、地元の新聞社の目に留まったのか、50人ほどの様々な分野で活動している人が、分担してそれぞれの分野の活動を紹介するコーナーへの執筆を依頼され、大学の現状や課題について紹介する文章を書くようになった。また、同じころ、地元の経済新聞の記者と懇意になり、その紙面に「現場から学校経営を考える」と題した連載を開始することにもなった。

 このようなアウトプットの機会が与えられると、書く材料を集めなければならないため、それまでだったら見逃していたような情報にも関心を持つようになったり、プライベートな時間の中でも、これは材料になるなといった気づきがあったりと、自分の活動分野に関して、情報をキャッチするアンテナが高く立つようになったのである。

 当時、どのようなことを書いていたのかを久しぶりに見てみたら、日本青少年研究所が、日米中韓の高校生を対象に行った調査を紹介し、日本の高校生の成長意欲が低いことを伝えている。その理由として、経済成長が止まり先行き不透明な時代であることと、我々大人が、食べるためだけでなく、何に価値を置いて生きているのかということを示せていないのではないかということを挙げている。偉そうなことを言っていて恥ずかしい気もするが、書いていた当時は、常にいろいろなものに関心を持ち、調べていたことがうかがえるものであった。

 経済紙に連載した関係もあってか、企業の社員向けの研修も頼まれるようになった。当初はキャリアデザインに関するものが中心であったが、徐々にマネジメントに関するものなどにも広がっていった。このような、社員や管理職といった大人を対象とする研修を担当するようになると、その評価の目はより厳しいものになることが予測されるので、ますます多くのインプットをする必要性に迫られることになった。

 アウトプットとインプット、どちらを先にすべきかについては考えが分かれるところであろうが、私の場合は、元来が怠け者ということがあるので、少し乱暴なやり方ではあるが、まずはアウトプットを引き受けてしまい、それに迫られてインプットを行うというやり方のほうが合っているようである。

 この時期、幸いにしてアウトプットの機会を多く得られたことで、私の成長のサイクルが早く回っていたように思う。